陰陽師フロスト

 吹雪を裂いて姿を現したのは、丸い悪魔であった。
 顔が丸い、身体が丸い、目が丸い。笑みの形に開いた口も丸い。童達が達磨にした雪が、そのまま命を得て歩き出したかのように、丸く白い。夏場の抱き枕にしてみたい、そんなことを思わせる悪魔であった。
「ヒーホー! まだ寝ないホ?」
「う、うむ……それは……」
「まだ眠くないホ?」
「いや、眠くはあるのだが……」
「どっちホ?」
「ね、寝る」
「寝るホ」
「寝るホ」
 そういうことになったホ。

(参考文献:夢枕獏陰陽師 太極の巻」他)